令和4年度(2022年度)
診療報酬改定におけるがんゲノムプロファイリング検査(CGP検査)に関する改定内容のポイント

監修:京都大学大学院医学研究科 腫瘍薬物治療学講座 教授 武藤 学 先生

 

令和4年度診療報酬改定において、CGP検査に関する診療報酬の算定方法が変更されました。これにより、CGP検査の実施に関して生じていた問題が、一定程度改善されたと考えられます。以下の記載内容をご覧いただき、CGPが必要と考えられる固形がん患者さんに可能な限りCGP検査を届けられるよう、ぜひご検討ください。

令和4年度(2022年度)診療報酬改定におけるがんゲノムプロファイリング検査(CGP検査)に関する改定内容のポイント

令和4年度診療報酬改定前に生じていた課題
Doctor's comment
課題1

出検時の過大な一時的負担

CGP検査の出検時点で算定可能な点数が8,000点(80,000円相当)にとどまり、検査会社に支払う費用よりも低い点数でした。このため、結果説明時に算定可能な48,000点(480,000円相当)を算定するまでの間、一時的に医療機関側で検査費用の大部分を負担しなければなりませんでした。

課題2

患者さんの転院・死亡・入院に伴う結果説明時点数の算定不能化

CGP検査の出検後、患者さんの転院・死亡により結果説明が行えなくなってしまった場合に、48,000点(480,000円相当)が算定不能となり、検査会社に支払った費用を回収できなくなることがありました。また、CGP検査はDPC算定対象であったため、出検後、結果説明までに入院した場合も48,000点を算定することができませんでした。

令和4年度(2022年度)診療報酬改定:CGP検査における算定点数の配分が変わりました。
POINT  CGP検査実施時に算定可能な総点数56,000点において、出検時に算定可能な点数の配分が8,000点から44,000点に増加した。

POINT1

 

CGP検査実施時に算定可能な総点数56,000点において、出検時に算定可能な点数の配分が8,000点から44,000点に増加した。

令和4年度(2022年度)診療報酬改定:CGP検査における算定点数の配分が変わりました。

※ 区分番号「B011-5」として新設され、DPC算定対象外となった
厚生労働省保険局医療課. 令和4年度診療報酬改定の概要(令和4年3月4日版)を参考に作成

Doctor's comment

令和4年度診療報酬改定による臨床現場のCGP検査への影響

今回の改定により、京都大学医学部附属病院ではCGP検査を今まで以上に積極的に提案することができるようになりました。特に、患者さんの転院・死亡・入院の際に生じる検査費用の医療機関側の持ち出しが改善されたことが大きなポイントです。CGP検査を必要とする患者さんがいらっしゃる場合は、下記ポイントを踏まえて実施可否をご検討ください。

  • CGP検査の出検時点で 44,000点が算定可能となるため、医療機関側で検査費用を立て替える負担を軽減することが可能となった。
  • 患者さんへの結果説明ができなくなった際に、多額の検査費用が医療機関の持ち出しとなっていた問題が、以前に比べ改善した。
  • がんゲノムプロファイリング評価提供料(12,000点)が「B」区分として新設・DPC 算定対象外となったことで、出検後、入院中の結果説明でも算定可能となった。

血液検体を用いたCGP検査について

血液検体を用いたCGP検査の診療報酬点数は
組織検体を用いたCGP検査が実施困難または検査不成立の場合に算定可能
Doctor's comment

2021年8月に国内初の血液検体を用いたCGP検査が発売され、実臨床で使用可能になりました。血液検体を用いたCGP検査を実施する場合、出検時のがんゲノムプロファイリング検査44,000点は、 ①組織検体を用いたCGP検査を行うことが困難な場合、②組織検体を用いたCGP検査で結果を得られなかった場合に算定可能とされています。

① 組織検体を用いたCGP検査を行うことが困難な場合

① 組織検体を用いたCGP検査を行うことが困難な場合

② 組織検体を用いたCGP検査で結果を得られなかった場合

② 組織検体を用いたCGP検査で結果を得られなかった場合

厚生労働省. 診療報酬の算定方法の一部を改正する件(令和4年厚生労働省告示第54号)別表第一(医科点数表)/
診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(通知)(令和4年3月4日保医発0304第1号)別添1を参考に作成

血液検体を用いたCGP検査における注意点
Doctor's comment

血液(血漿)検体を用いたCGP検査は、組織検体を用いたCGP検査と比べて検体採取が容易で、結果判明までの時間が短いなどの利点がありますが、偽陰性率が高い、TMBが保険適用外となるなどの留意点があります。実臨床で、血液(血漿)を用いたCGP検査をする際は利点・留意点を考慮して選択する必要があります。

血漿検体および組織検体を用いたCGP検査の利点と注意点

 利点注意点
血漿
CGP
  • 検体採取が容易であり、採取時点における腫瘍の遺伝子異常の情報を取得可能
  • 結果判明までの時間が短い
  • 腫瘍量が十分でない場合、検出されない可能性がある
  • 組織検体に比べると偽陰性が高いとされる
  • 加齢に伴いCHIPによる偽陽性の頻度が高まる
  • コピー数変化、および、遺伝子融合の評価が困難な場合がある
組織
CGP
  • 腫瘍細胞における遺伝子異常を直接評価可能
  • 検体採取に患者負担、合併症のリスクなどがある
  • 結果判明までに時間を要する
  • 腫瘍細胞割合が低い場合には偽陰性となる
  • 過去の検体は現時点の腫瘍細胞における遺伝子異常を反映していない可能性がある
  • 検体採取から3~5年以上経過している場合には検体が劣化する

※CHIP(clonal hematopoiesis of indeterminate potential):正常細胞内のクローン造血由来の遺伝子変異。高齢になるほど頻度が高くなる

 

日本臨床腫瘍学会・日本癌治療学会・日本癌学会3学会合同ゲノム医療推進タスクフォース.
血中循環腫瘍DNAを用いたがんゲノムプロファイリング検査の適正使用に関する政策提言(令和3年1月20日)より改変